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冷たい熱帯魚
いや、観終わった直後は、本当に観なきゃ良かったと思ったんですよ。
だいたい、出足から躓いていて、奥さんとの待ち合わせに遅れて険悪な雰囲気の中、なだめすかして映画館に入ったら、始まるやいなやあの殺伐としたオープニングですよ。あとはエンドレスのグロ描写だし。エンディングのオチがまたキッツいし。
でもね、ちょっと時間が経つと、これが意外なことにおもしろかったことしか思い出さないのね。もういっぺん観たいとすら思う。ときどき、こうやって腕を反対の耳に伸ばして「私も、幸せに、なりたーい」なんてやって遊んだりするし、奥さんは「あいよ、ちゃっちゃっ」とか行って料理の準備してるし。

でんでん演じる村田のキャラクターがなにより強烈なんだけど、吹越満演じる。小市民的な主人公の社本に対して、次第に「ファイトクラブ」のタイラー・ダーデン的存在になっていくのがおもしろいところ。ていうか、村田は明白に社本に対して父親として振舞う。それも村田自身が幼児期にトラウマを植え付けられたまさにその「強い父」として。だいたい力も金もない社本を村井が取り込むべき理由は何もなかったわけで、村井自身に自ら父親を演じることで乗り越えたい何かがあったからなんだろう。そしてそうなると、あとは社本が父親を乗り越えていく、おなじみの父親殺しの原型的物語だ。妻を伴ってプラネタリウムに行くシーンが悲しみにみちているのは、社本自身が自らの無垢な少年性に別れを告げるからないかな。
でも、この映画は単なるエディプスの話ではない。そこに村田の妻愛子(黒沢あすか、怪演!)や、社本の妻妙子 (神楽坂恵)といった女たちの欲望と打算が絡み、話はさらにおもしろくなってくる。
村田のストレートな欲望の追求の前におろおろするしかない社本(それは父権的な男性性を失い「去勢された」我々の姿なんだけど)をよそ目に、女たちはみな嬉々としてかしずき、貪欲に欲望を満たし生き延びようとする。
最後のとどめはもうひとりの女、社本の娘の美津子だ。ラストの強烈な台詞をどう取るかは、だれに感情移入するかによって違ってくるだろう。僕は基本的に社本に感情移入してしまったので、このラストには絶望的な気持ちになってしまった。でも考えてみれば、美津子は、愛子や妙子のように父権的な強い男を利用し依存して生きていくのではなく、(精一杯の強がりを込めながらも)たったひとりで生きていく解放感を表出しているわけだから、これは救いだよね。ハッピーエンドといってもいいかもしれない。

いや徹底して妥協せずに作られた映画です。テレビでは(少なくとも地上波では)絶対放映できないと思います。
間違いなく2時間飽きることなく楽しませてくれますから、ぜひたくさんの人に見てもらいたいなあ。
厭な思いする人も多いかもしれないけど、それもまたザマアミロってなもんで。


…と、いうような文章を映画を観た直後、地震の前の日に書きはじめてた。
なんとかそのまま書き上げたはいいけど、本当のところ、こんなご時勢にお勧めしていいものか、ちょっと迷ってしまうなあ。心が弱ってる時に観るにはキツいかもしれないかもしれない。
で、もたもたと手直ししているうちに、昨日で大阪での上映も終わってしまいました。残念。

僕はセリーヌの「夜の果ての旅」という小説が大好きで、この物語は、この世の中を、グロテスクなまでの誇張で徹底的に卑小で醜いものとして、呪詛を込めて描いているにもかかわらず、だからこそ読むと元気が出る。不思議に生きる勇気がわいてくるんですね。
近いパワーがこの映画にもあるんじゃないかと思います。

冷たい熱帯魚
(2010年日本/146分/カラー/2.35:1/R-18+)
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

【2011/04/02 02:20】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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