梅田TOHOシネマズでコリン・ファース主演の話題作「英国王のスピーチ」を見てきました。
吃音に苦しむ主人公の英国王ジョージ6世が、変わり者の言語療法士や妻の支えを得ながら障害を克服し、王として成長していく様を描いた作品なのですが、非常に巧みに語られていて、なるほど、アカデミー賞などの評価を受ける映画だな、と感心させられました。 たとえば開巻早々、公衆の前での重要な演説に臨む主人公ヨーク公(のちの英国王ジョージ6世)が絶句する気まずいシーン、長い沈黙、そわそわと顔をそむける聴衆たちをちらっと写して、長く引っ張らずに、吃音の治療のシーンにぽーんと切り替える絶妙の省略。また、この競馬場のひろびろとしたファーストシーンはラストのシーンにもつながっています。 役者の演技もお見事で、コリン・ファースの吃音者の演技の自然さや、愛嬌さえ感じさせる抑制された威厳をまとった妻エリザベス役のヘレン・ボナム・カーターなど素晴らしいです。コリン・ファース演じる英国王はプレッシャーに押しつぶされそうになって、やけくそになったり、周囲に当たり散らしたりもするけれど、心やさしくユーモアのセンスも備えた共感できる等身大の人物として描かれていて、そのあたりがこの映画が高く評価されたポイントだと思います。 にもかかわらず、僕がラストの演説シーンであまり盛り上がれなかったのは、なんなのかなあ。障害を克服していく王自身の成長物語のクライマックスにもかかわらず、その演説の指し示す「戦い」が王自身の物語となんら意味をもったものとしてリンクしてこなかったというか。アメリカ映画におけるナチスという存在は無条件の悪役であるというお約束だとは頭で理解しているのですけどね。これは個人的なコンディションの問題かもしれない。現実の切実な戦いに従事する人々の姿が脳裏にちらついてしまうんです。 しばらくはフィクションにとっては分の悪い日が続くのかもしれません。 あらかた書き上げたところで宇多丸さんの「シネマハスラー」を聞きました。 「英国王のスピーチ」は「ベスト・キッド」である説w、確かに中盤の特訓のシークエンスはなかなか盛り上がりましたね。 原題:The King's Speech (2010年イギリス、オーストラリア/118分/カラー/ヴィスタ/ドルビーSR、ドルビーデジタル) スポンサーサイト
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本作はコンプレックスを抱え、不向きな職業に就かざるを得なかった中年男の物語だ。俳優になれなかったライオネルは、王室のスピーチ専門家に向いていたのだろうか? イギリス国王という職業はジョージに向いていたのか? 手に汗握る一世一代の感動スピーチ、2人の男の成… 名機ALPS(アルプス)MDプリンタ【2011/04/08 02:51】
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