はなればなれに/ゴダール・ソシアリスム
なにかおもしろそうな映画やってないかなーと調べてたら、第七藝術劇場でゴダールの新作をやってると言う。おまけにモーニングショーで旧作の特集上映もあって、この日は「はなればなれに」だ!ということで、3時間睡眠のヤバいコンディションで十三まで出かけてきました。

はなればなれに」は確かちゃんとフランス映画社で配給された時じゃなくて、自主上映みたいなので見たんじゃなかったかなあ、いずれにせよ20年以上昔の話だと思う。昔見たときはあの有名なダンスシーンにシビれ、なんと軽やかな映画なんだろうと思った覚えがあり、それは今回も基本的には変わらない。かすかに雪景色のパリの街を自転車で、クルマで、駆け足で走り回る主人公たち、アメリカ観光客より早くルーヴルを駆け抜ける競走、サミー・フレイとクロード・ブラッスールのパッティ・ギャレットとビリー・ザ・キッドごっこ、なんといってもブラッスールの気をひこうとするアンナ・カリーナのくりっとしたキュートな瞳!
でも、この映画を今見て、あれ、こんな感じだったっけって思うのは、どちらかと言えば、全体を覆う重苦しいムードだ。特に後半のアンナ・カリーナの心配そうな暗い顔。サミー・フレイの仏頂面。裏切りと死の悲劇的な展開。この苦々しさが「気狂いピエロ」につながっていくのかな。
それにしてもこのオチ!!!!!すっかり忘れてたけど、ひっでえなあ。
あ、そうかまさにその「続編」が「気狂いピエロ」なのか!

そして続いて新作「ゴダール・ソシアリスム」。開巻早々映し出される波しぶきや黒人女性の横顔など、素晴しい強度のショットの連続なんだけど…懸念したとおり、盛大に寝ちまった。ふっと目を覚ましたら、画面上ではギターを担いだパティ・スミスがうろうろと甲板を歩き回っていて、ええっ!と思ったのだけど、あとで奥さんに聞いたらレニー・ケイを従えて普通に歌ってたって。しまった。
地中海をクルーズする豪華客船の乗客である元ナチ残党の老人の金塊をめぐる謎、みたいなストーリーラインがなんとなくあって、でも、実際は引用とモンタージュでヨーロッパの衰亡を思索するゴダール流の思考実験(もしくはボケ老人のダダ漏れのつぶやき)。第2章のフランスの片田舎のガソリンスタンド一家をめぐる謎の寸劇は比較的落ち着いた編集だけど、第3章にいたってはほぼ完全にさまざまな引用映像のコラージュだから、特に前半のはっとするような美しい映像にもかかわらず、安易な審美的な評価(「良くわからないけれど映像は素晴しい」といった)も許されない。
ゴダールの思索に付き合うだけの映画的/思想的素養も持ち合わせていないけれど、たとえばオデッサの字幕が登場するたびに「戦艦ポチョムキン」の、バルセロナの字幕が出るたびに闘牛のクリップが挿入される繰り返しのリズムは笑える。ところが、戦艦ポチョムキンはもちろんロシア革命のきっかけとなる水兵の反乱を描いた映画だし、闘牛のクリップすらも、ゴダールによればスペイン内乱の記憶と深く結びついていることが、映画の最後の最後に明かされることになるのだ。パティ・スミスも、もちろん抵抗のアイコンとしての起用なんだろうな。
でもやっぱりゴダールの映画の救いは、どんなに難解な(と言う言葉はあんまり使いたくないのだけど)映画でも馬鹿馬鹿しい笑えるシーンがそこここに(おそらくゴダール自身自覚的に)挿入される点だ。第2章のガソリンスタンド、娘が給油スタンドの脇でバルザックのペーパーバックを読んでたりする、いかにもゴダールな風景の横には、なぜだかロバとアルパカがつながれているこのナンセンス。
それにしても、地中海沿岸の(といってもヨーロッパ対岸の北アフリカだけど)ここ数ヶ月の動きと奇妙に呼応するこの映画のエンディングのアクチュアリティと来たら!

はなればなれに(原題:Band À Part)
(1964年フランス/96分/モノクロ/スタンダード/モノラル)
ゴダール・ソシアリスム(原題:Film Socialisme)
(2010年スイス・フランス/102分/デジタル(16/9)・35mmフィルム(1×1.75)/DTS Dolby)
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【2011/02/22 23:46】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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