その街のこども・劇場版
昔「セーラー服と機関銃」が大ヒットして薬師丸ひろ子が大人気者だったころ、受験勉強で彼女が休業中の夏休みに、前年公開したばかりの「セーラー服と機関銃」に未公開カットを足して再編集した「完璧版」に、彼女がデビュー当時に出演した「装いの街」というTVドラマを添えて映画館公開するという興行があって、さすがにファンとしてもアコギな商売だな、と思ったもんだった。
「装いの街」は見てないのだけど、昔はビデオ起こしのフィルムってかなり悲惨な画質だった。にっかつロマンポルノの末期にアダルトビデオの隆盛に対抗してロマンXというビデオ撮りのハードコア路線があったけど、スクリーンで見るにはちょっと耐えられない画質だった。つうかそんなもん映画館に見に行くくらいなら家でAV見てるって。そうしてにっかつはつぶれた。

その後デジタル技術の進歩により、現在では映画の撮影にDVが使われるのは割と普通だったりするようなので、隔世の感がある。デジタルカメラの強みはフィルムに比べて機材が少なくてすむ、その機動性にあり、このドラマのように、夜の街をただ歩き続ける男女を追い続けるというドキュメンタリックな作りには最適でしょう。
今年観た映画では吉祥寺の街をギターを片手に歩き続ける前野健太の姿を、Vワンショットで追い続けた、松江哲明の「ライブテープ」もよかったな。これはデジタルではなかったと思うけれど、北海道へ自転車旅行を試みる不倫の旅をビデオカメラで撮り続ける「由美香」にしても、ロードムービー的主題にこのメディアは相性が良い。

主人公の二人の好演についてはテレビで見たときに書いたような気がするので省略。
ただ一点。いや正直なところ観る前には、映像的に問題ないにしても、テレビサイズで作られて一度見ているドラマを、もう一度劇場で見てもどうかなあ、という気持ちがあった。
ところがラスト、サトエリと森山君最後に無言でぎゅっと抱き合う別れのシーンにサトエリが見せる、素顔に近い柔かい笑顔の美しいこと。これはテレビで見たときは気がつかなかったから、ここだけでも映画館で見た甲斐があったと思う。確か最初は割とイケイケ風にばっちり化粧が決まっていたはず。まああんだけ泣けば化粧も落ちるってことだろうけど、これは、最初は妙にちぐはぐでなかなかお互いをさらけ出すことができなかった二人が、一晩の道行を通じて、震災で抱え込んだ屈託の中から素の自分に向かい合い、深いところで理解しあう過程と見事にパラレルになっている。
そしてふたりは別れ、それぞれお互いの明日に向かってまた歩き出す。

(2010年日本/83分/カラー/HD/ビスタ/ステレオ)
その街のこども劇場版
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【2010/12/29 22:44】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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