カラフル
なんばTOHOシネマズで原恵一監督のアニメーション「カラフル」を見てきました。日曜日の2回目の回ということもあって、120席あるセレクトスクリーンの座席はざっと見て8割方は埋まっていたと思います。観客は中高生から大学生くらいの若い年代がけっこう多いかな。

僕は読んでいなかったんだけど、森絵都の原作は、98年に発表されて産経児童出版文化賞を受賞してから10年以上たつ今でも、いまだに中学生の間で人気が高いらしく、うちの娘の周りでもけっこうみんな読んでるんだって。
援交女子中生が大きな役どころを占める話どうよ、ってなことはおいといて、中学生ならではの世界への違和感や、大人の不正や欺瞞への潔癖な嫌悪といったものを上手く掬い上げてるんだろうな、というのは容易に想像がつく。
僕が今回の映画で一番ドキっとした演出も、主人公が(詳細は省くけれど)手作りのハンバーグを見て浮気した母親に対する嫌悪感を感じるシーンだ。ほんの数カットのインサートの鮮やかさに、ふと、映画のおもしろかったところがどこまで原作のままなのか、映画化に際しての脚色なのか、という点を、本屋で原作をパラパラめくって追ってみました。

いちばん気になったのは早乙女くんと玉電の廃線跡をたどるエピソード、主人公が初めて「他者」に心を開いて「外部」に踏み出していくきっかけとなる重要なシーンで、たまたま駅で出あった二人が、いっしょにちょっとした行程をたどるうちに、少しずつ心を開いていくさまを、今は亡きチンチン電車の映像のカットバックで見せていく、素晴しいシークエンスだけど、やはりこれがまるまる映画のオリジナルだった。

主人公が援交しようとしているひろかをラブホテル前でつかまえ、雨の中を走って連れ去る場面は原作どおりだ。ただ、そこに二子玉川の実際の具体的な景色を与えたのは映画の演出。ガード下のふたりの微妙な立ち居地がとってもドキドキする。主人公がひろかや母親を目撃するラブホテルの連れ込みっぽいひなびた佇まいも映画オリジナル。見上げるようなアングルが絶妙だ。
他に上手いと思ったのは、主人公を鋭く見抜くもうひとりのヒロイン唱子の、吃音めいたしゃべり方。台詞や行動はほぼ原作どおりなのに、あのしゃべり方だけで、実はけっこうズバズバ思いついたことを言う原作の唱子のキャラクターがより受け入れやすい魅力的なものになっていると思う。

原作は、小説だから当たり前なんだけど、言葉でちゃんと説明しているんだ。それを映画にするときに、基本的に多くのことばを映像に置き換えたり、あるいはカットしてしまう。だから、原作の方が、なぜ主人公がこういう言動を取るのかというのは非常に「わかりやすい」。一面的にしか世界を見ていなかった主人公が「他者」とのかかわりを通じて新たな世界観を持つに至ったことを示す、非常に重要なシーンがある。ここで主人公がこの小説の(つまり映画の)タイトルにかかわる台詞を発するのだが、原作では心中の声として出ていたことの流れで出てくる言葉が、映画では前後がなくここだけ言葉として発せられるので、いささか唐突な感を抱いてしまう。多くの観客には「みんなひとりひとりがオンリーワンなんだからありのままの君でオッケーなんだよ」という(最近はやりの)安易なメッセージにしか聴こえなかった可能性が高いのではと余計な心配をしたりする。いや、実は僕自身にそう見えてしまっただけなんだろうけどね。

こうやって付き合わせていくと、原作ものを映画化する、ということについて、この映画の作り手が実に誠実に取り組んでいる、ということがすごく良くわかる。
最近良くある、主人公が自分の行動や気持ちを言葉で説明するような映画や、メディアの違いにまったく無自覚で、単に原作のイメージや台詞をそのままなぞるコスプレごっこのような多くの映画化作品の作り手には、爪の垢を煎じて飲ませたい。何とは言わんけど、よくあるじゃん、主人公たちが見詰め合って「俺たち仲間だよな」と言い合うような漫画原作の映画。
たとえば、主人公が早乙女くんとコンビニの前で唐揚げと豚まんを交換するシーン。原作ではさらっと1行触れているだけのエピソードをしっかり拾い上げて映像化するだけで、台詞で口にせずとも、一発でふたりがもう「仲間」なんだということを表現して、なおかつ台詞で片付けてしまえば与えることのできない感動を与えてくれる。
映画ってそういうメディアなんだ。
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

【2010/09/10 01:08】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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