バイブル
久しぶりに豊田道倫「バイブル」を聞いて、買ったときに感想をまとめかけていたのを思い出して仕上げてしまうことにする。

バイブル二つ折りの簡素な紙ジャケット、基本はギターの弾き語りなので、一聴したときは、日常を日記的に片っ端から録音してパッケージして速攻リリースというようなものなのかと思った。実際一発録りと思われる歌と演奏はかなりラフで、声はかすれ音程外れまくり、1曲なんか完全に途中で間違ってしまったりしている。でも聞けば聞くほど、そんな荒さがマイナスになるどころか、生々しい魅力となってくる。全体の構成まで良く考えて作られたアルバムだと思うようになる。

最初の曲、静かに爪弾かれるギターの伴奏に合わせて「道頓堀はやめましょ人が多いから」とつぶやくように歌出だされる「街の底」に特徴的な濃厚な色っぽさがアルバムのトーンを決定付けている。
特に前半、テレビで謝る高相さんだったり、一人暮らしをはじめてふと思い出した昔の女の作ってくれたサラダだったり、深夜にショップ99で買い求める豚バラだったり、あるいは炊飯器で飯の炊ける匂いだったりと、私生活の変化を反映してかいつもにもまして生活感があふれるモチーフを発端にする曲が多いのがこのアルバムのもうひとつの特徴なのだが、でもどの歌も単なる生活の描写に終わらず、そこから身勝手で切実な孤独や愛情や憎しみにまで歌が発展していくのには荒っぽい歌唱あっての凄みがある。
ギターの伴奏も決して技術的に上手くはないかもしれないけれど、ただ激しくかき鳴らすだけではなく、時にメランコリックに静かに爪弾くスタイルを交え、歌の世界を十分に広げてくれる。特に終盤「おまんこちゃん」「(無題)」のあたりは、ねっとりとエロい声に音程のはずれた生々しい節回し、それに独特な詞としぶといギターの演奏があいまって、ちょっとヤバいくらいの濃厚さだ。リアルを通り越してアシッドな空気さえ漂わせている。いわゆる「アシッドフォーク」と言われるタイプの音楽とは対極の音楽なのに、アシッドなフォークとしかいいようがないこのサイケ感。
そして続く「君はドリーマー」がこのアルバムのクライマックスだ。抑え目に「夢を見ていたような」と切なく歌われて、最後に感情が爆発し、その後ギター弾き語りのモノトーンのこのアルバムで一瞬色づく瞬間が訪れる。

なんか中途半端な文章だ。でも今年の私的ベスト入り決定の1枚、広く聞かれて欲しいな。
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テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

【2010/05/29 02:01】 | 今日の1枚 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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