ライブテープ
ということで九条シネヌーヴォX、貸切状態で松江哲明監督「ライブテープ」を見てきました。

この映画についての事前の予備知識は「ギター弾き語りで歌いながら街中を移動する前野健太という歌手をひたすらワンカットで追い続けるドキュメンタリー映画」というくらいしかなかったのだけど、オープニング、ピンクのど派手な晴れ着姿のおねえさんが神社で賽銭投げて手を合わせるシーンからはじまり、行列をなす初詣の参拝客がじろじろ眺める中おねえさんを追ってカメラが鳥居から出る瞬間にギターの音が外から入り、あれって思ったらおねえさんはフレームアウトしてボブ・ディランみたいなもじゃもじゃの頭のサングラスの若者が歌いだし、タイトルが出る、というここまでですっかりツカミはオッケー、もう取り込まれてどきどきしている。「ドキュメンタリー」と言うけれど、ただ事実をそのまま撮るのではなく、仕込みも計算も演出もちゃんとあって、それでもライヴなリアリティの面白さを次々と見せてくれる映画なんだ、というのがここまでで分かるようになっている。
たとえば商店街の路地のバーで待ちかまえていた二胡奏者とおもむろにセッションとなるシーン。二胡の音色がちょっと湿り気のある曲とハマって音楽的にもどきどきする前半のハイライトのひとつだと思うけれど、カメラがひいていくと、路地の奥の端で通りがかりのカップルが演奏をのぞいている姿が見えるんだけど、途中で男が「そろそろ行こうぜ」みたいな身振りをするのに女の方が押しとどめて見続けている、といった遣り取りが見えたりする。
クライマックスは最後バンドメンバーと合流して井の頭公園の音楽堂で演奏するシーンなんだけど、ここでも「仕込みちゃうの?」というような公園の一般人や夕陽や空などなど、前野の歌とあいまって映画の神が降りて来たみたいな感動的なシーンになってしまっている。
パンフレットで磯部涼が「(ワンカットなので)無理やりにでも風景が流れていくのがいいなあ」と言っているのに全面的に賛同。

松江監督はドキュメンタリーなのにカットに意味を持たせようとするじゃないですか。あの参拝客の声やサングラスのシーンは、いつもみたいにカット割りで入れていたら鼻につくかもしれないけど、今回はそれが上手く流れて「あ、今のって何かちょっと意味ありげ」というぐらいで成立させている。

「あんにょん由美香」との大きな違いはここで、「あんにょん由美香」のラストシーンは確かに感動的なドキュメントなのだけど、言い方は悪いがあくまで映画の奇跡というストーリーやテーマにのためにいわば用意されたシーンだったのに対し、今回のラストシーンはそれ自体が映画の奇跡なのだ。

音はすごくきれいに録れている。ところどころディレイっぽいイフェクトや左右にパンするなどの効果が使われていて、確かに面白いけど、どうかな、と思った。ただし、たとえば前野が背中を見せているから音をこもらせるなんてことをしたってしょせんはそれも演出にすぎないのだから、音がどうあるべきかというのは正直判断しかねるところ。個人的には画面にあわせて「自然な」音作りでよかったのではないかという気持ちの方が大きい。

前野健太の音楽は、ポップなところがあってよかったと思う。正直(こう見えて)僕はフォークが苦手なので、パワーや詞のユニークさは感じられてもわりと引いてみてしまう。それが二胡やサックスが加わるだけで一瞬にして音に華やかさが出る。あとは最後のバンド「David Bowieたち」との演奏がポップでヤケクソなパワーがあってよかった。
CD「ロマンスカー」も買わさせられてしまいました。

(2009年/カラー/74分/16:9/HD)
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

【2010/01/29 01:21】 | 映画 | トラックバック(1) | コメント(0) | page top↑
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え!!こっ・・・こんなにかわいいwww
お花屋さんのちょこっと日記w 花ギフト館のブログ【2010/01/29 10:44】
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