あんにょん由美香
九条のシネ・ヌーヴォXで松江哲明監督「あんにょん由美香」を見た。

AV・ピンク映画を中心に500本とも600本とも言われる出演作品を残して2005年に急逝した女優林由美香が、韓国人スタッフで韓国人俳優と共演する「東京の人妻純子」という不思議なエロVシネマが発見されるところから話が始まる。この作品に惹かれた監督の松江哲明が関係者の取材を行い追いかけていくのがメインのプロットだ。

この「東京の人妻純子」が発見されるきっかけとなった「女優・林由美香」の監修である映画評論家柳下毅一郎が「林由美香は最後の映画女優である」という持論を述べる。なぜかといえば、今日林由美香の映画を見ようと思えば都内のピンク映画館のどこかで必ず彼女の出演する映画が上映されているからである。おそらくそんな映画女優は他に存在しない。

「硬式ぺナス」「由美香」「たまもの」という林由美香の代表作を撮った3人の男たちとともにその映像の場所をたどる松江監督の巡礼。作り手の男たちの幻想を受け止め、軽やかにかわしながら輝く女優林由美香の魅力が浮き彫りにされる。平野勝之の「由美香」は衝撃的に素晴しい映画だった。カンパニー松尾の「硬式ぺナス」は実は見ているような気がする(80年代末のAVアイドル時代、林由美香はお気に入りの一人だったし)。いまおかしんじ「たまもの」は見ていなくて、そうこうしているうちに彼女が亡くなってしまい、ふだんピンク映画なんか見ていないのに亡くなったから見るっていうのがどうもいやでそのままになってしまっているのだけど、こうやって断片を見ると、なんとしても見たくなる。

かつて松尾と平野は個人的にも由美香と恋人関係にあり、またその死を間近に見ているだけに、由美香の映画を撮ろうという松江に協力しつつも困惑を隠さない。「気乗りしないんだよね」という松尾の渋い表情。「中途半端なマネをするなよ」と釘を刺す平野。松尾は、それでも、最近ハメ撮りの仕事でたまたま使った静岡の場末のラブホテルでつけた有料テレビで由美香のAVが流れていたと嬉しそうに語る。

自作に対して「松江くん、まだまだね」ということばを残したままこの世を去った由美香の映画を作ろうと考えた松江が目を付けたのが「東京の人妻純子」なのである。正直なところなぜこの映画を?という疑問は最後まで残る。ところがこんな映画にもさまざまな人がさまざまに関わっていて、それぞれの現在があるということが丹念に追われていくうちに、がぜん面白くなっていく。この映画の直後に役者を辞めてしまった者、役者を辞めざるをえなかった者、百戦錬磨のピンク映画カメラマン、ただの調子のいいスケベオヤジにしか見えない監督などなど。一様に最初は困惑した表情で登場するのに、最後はホンマにやるんかいというクライマックスに向かってみんな集約していく。
そして前半の柳下や中野、そして松尾のことばがエコーする美しいエンドシーン。

ちょっとうまくまとめすぎじゃない?とも思う。平野はきっとこれじゃ納得しないだろうな。でも他にもヤギのいる謎の散髪屋?で散髪するいまおかとかちょっとありえない場面がいっぱいあって、かなり面白かった。


シネ・ヌーヴォは今回初めて。ロビーにはアート系・単館系の映画のちらしやフリーペーパーがずらっと設置され、キネ準のバックナンバーが並んでいたりして、十三の第七藝術劇場と同じコアな映画ファンの映画館という雰囲気。私はもはやコアな映画ファンではないのだけど、この雰囲気は嫌いじゃない。壁一面に映画関係者のサインがいっぱいで、これを追っているだけで楽しい。
メインのスクリーンでは宮沢義勇監督の回顧特集かなんかをやっていて、「あんにょん由美香」はロビーの奥の細い階段を上がった2階にある天井の低い試写室みたいな小さなスペース「シネ・ヌーヴォX」で上映された。整理券番号が早かったので前から二番目の真ん中の特等席に一度座ったんだけど、スクリーンが低いのでこれじゃ後ろの人が見えないなと余計な気を回して横に移ってしまった。
麻生久美子(ハアト) シネ・ヌーヴォ
入口のノウゼンカズラのオレンジの花がいい感じです。
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【2009/09/20 14:08】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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