ミス・ホリー・ゴライトリー、旅行中。
カポーティ「ティファニーで朝食を」(新潮文庫)、村上春樹による改訳の文庫化です。
例によって読み比べてみましょうか。冒頭部です。

私はいつでも自分の住んだことのある場所―つまり、そういう家とか、その家の近所とかに心ひかれるのである。たとえば、東七十丁目にある褐色砂岩でつくった建物であるが、そこに私はこんどの戦争の初めの頃、ニューヨークにおける最初の私の部屋を持った。それは屋根裏家具がいっぱいつまった一部屋で、ソファが一つと、暑い日の汽車旅行をを思い出させるような、あの気持ちのいらいらする、とくべつに赤いビロードを張った、ぼこぼこした椅子がいくつかあった。

(滝口直太郎訳)


以前暮らしていた場所のことを、何かにつけふと思い出す。どんな家に住んでいたか、近辺にどんなものがあったか、そんなことを。たとえばニューヨークに出てきて最初に僕が住んだのは、イーストサイド七十二丁目あたりにあるおなじみのブラウンストーンの建物だった。戦争が始まって間もない頃だ。一部屋しかなくて、屋根裏からひっぱり出してきたようなほこりくさい家具で足の踏み場もなかった。ソファがひとつに、いくつかのむくむくの椅子、それらは変てこな色あいの赤いビロード張りで、いやにちくちくして、まるで暑い日に電車に乗っているような気がした。

(村上春樹訳)


ちなみに原文はこんな感じです。

I am always drawn back to places where I have lived, the houses and their neighborhoods. For instance, there is a brownstone in the East Seventies where, during the early years of the war, I had my first New York apartment. It was one room crowded with attic furniture, a sofa and fat chairs upholstered in that itchy, particular red velvet that one associates with hot days on a train.


"draw back"は「心ひかれる」じゃなくて「ふと思い出す」が正解だろうな。あと「屋根裏家具」ってなんだ?
さすがにこなれ具合がちがいますね。でも原文の簡潔さに比べると説明的に感じてしまうのは翻訳の宿命というもんでしょうね。
カポーティは「冷血」に続く新訳の文庫化で、このあと新潮文庫はサガン、ヘミングウェイ、ジョイスと改訳が毎月一冊出るようす。個人的には6月刊行予定の「フォークナー短編集」がちょっと興味ある。これも旧訳は滝口先生で結局読めなかったんだ…。


憂国のおかき屋さん、播磨屋本店から季節のご挨拶が届く。
でも今回はあんまり激しくないな。偽装事件に対して聖書の「汝らのうち罪なきものまず石を投げ打て」を引いて節度ある対応を求めていたりする。
これ、どうも微妙にいくつかのバージョンがあるみたいなんだなあ。
HPに掲載されている奴(これとか)なんか、もっとぶっ飛んでいるんだけど…。
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【2008/11/28 01:29】 | | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
>まつだいらたけちよさん
ほんと、播磨屋さんのお手紙を読むと、毎回日本に生まれたありがたさをひしひしと感じさせられます。
陰謀論ってたいがいどうしようもない現実からの逃避として召喚されることが多い(俺がこんな目に遭うのはCIAの陰謀だ←「CIA」はもちろん「ユダヤ」でも「俺を嫌いな上司」でもなんでも可)ので好きじゃないんのですが、播磨屋さんの場合、なんかそんな怨念めいたものとまったく無縁で、爽やかさすら感じさせられるのがよいと思います。
【2008/11/29 00:57】 URL | takut #-[ 編集] | page top↑
播磨屋さん・・・ さすがですね・・・・
もうこりゃ郵便ポストが赤いのもウチの嫁さんがすぐ怒るのも全部ユダヤの陰謀で間違いないです。
それでも地球がぐるぐる回っているのはもちろん陛下のおかげですね!!
「国防挺身隊」にぜひ加入してほしいです。
【2008/11/28 08:39】 URL | まつだいらたけちよ #-[ 編集] | page top↑
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