いこかもどろかオーロラの下へ
日本映画専門チャンネルの相米慎二特集で「雪の断章・情熱」(1985)再見。やっぱり面白かったと思うのだけど、でも一緒に見た奥さんには「わけわからんへんな映画」と言われてしまった。「変なところ」とうのは、たとえばオープニングのアバンストーリー(主人公の少女時代の話)を14シーンワンカットで無理やり収めてしまうところとか、殺される女性の部屋や函館の飲み屋街の不思議なセット造形とか、主人公の心象を表すピエロや異形のイメージとかだと思うのだけど、すべてが長回しのスタイルと密接に結びついてこの映画の魅力となっているから困ったところ。ワンシーンワンカットの長まわしの結果ひとつひとつのシーンが長くなるため、映画を決められた長さに収めるために場合によってはシーンそのものをカットせざるを得なくなり、その結果ストーリーや登場人物の心の動きがわかりにくくなる。「わけわからん」というのはこのあたりだろう。前出の「映画の断章」でも相米自身このあたりの問題については率直に認めていて、ミステリー的要素や他のヒロインと微妙な三角関係をなす男性ふたりのシーンをけずってヒロインの斉藤由貴の映画としてこの映画を整理していく苦渋の内幕が語られていて興味深い。
好きなシーンはたくさんあるが、先述の殺される女性のアパートでの歓迎会のシーンが好きだ。どんなマンションやねんというような巨大なロフトつきのスペースでネクタイ姿の若者たちがギターをかき鳴らしながら歌い踊っている(そのうちのひとりは80年代の日本映画ファンにとってはカルト的存在の脱力系俳優加藤賢崇なのだが)。ヒロインが現れ、おもむろに物悲しいメロディの古い歌謡曲(孤児の彼女の母親がかつて子守唄代わりに歌い聞かせた歌だというのが後にわかる)を口ずさみだす。若者たちがおもむろにギターや木琴といった楽器で伴奏を合わせだす。ヒロインは部屋の中を左右に上下に移動しながら、北大受験を宣言する。主人公の感情の動きを歌とアクションで表現しワンシーンワンカットでとらえるこのシーンは、クライマックスの桜の木下の宴会のシーンとともに、まさに相米慎二の映画ならではのスリリングで魅力的な名シーンのひとつだと思う。
観る人を選ぶとか言ってしまうのは抵抗がある。この映画や「台風クラブ」「ションベンライダー」といった映画は、僕にとってはストーリーや映像美ではなく、画面の中で登場人物が動き回る、その動きそのものが映画の面白さだと教えてくれた原点のような映画だ。今回この映画を久しぶりに観てその気持ちは変わらなかったし、相米慎二の映画の中でも圧倒的な強度を持った映画の1本だと思う。

ところでこの映画、公開の翌年にヴィデオ化されたあと再商品化されず、テレビ放映すらほとんどされなかったのはなぜなんだろう。
原作者がOK出さないのか、それとも「不適切な表現」のためか。
そういえばこの映画、85年の東宝のお正月映画だったのだけど、併映の「姉妹坂」(大林宣彦監督)は京都を舞台にした4人の女優(紺野美紗子・浅野温子・沢口靖子・富田靖子)競演の華やかな映画かと思いきや…これまた「みなしご」映画なんですね。正月早々いったいなんという不景気なと映画館で激しくずっこけたものです。いやこっちも別な意味でかなりトンデモな映画だったような気がするのですが。


夕方から急に冷え込む。
むちゃくちゃ寒いじゃないか。
スポンサーサイト

テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

【2008/11/19 01:37】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
<<壁と橋 | ホーム | 夜へ>>
コメント
>こいずみきょうかさん
おつとめご苦労さんです。
いやいや大林はいまだに自らの映画作家的欲求にのみ忠実な映画をインディペンデントで作り続けてるんだからすごいですよ。
ぜんぜん観てませんが。
【2008/11/29 01:03】 URL | takut #-[ 編集] | page top↑
おひさしぶり。大仕事が一段落で、ほっとしている私です。なんと、スカパーは相米特集なのですね。近頃全然見てないんですが。
そうですか、雪の断章からもう24年ですか…。
ラストの討ち入りシーンに、呆然としてしまったのが、昨日のようです。掛け値なしの傑作。
併映の姉妹坂、いきなりの同命館大学でのフェンシングにもずいぶん笑わせられましたが、まさか4半世紀後にモデルの大学(だよね)に五輪のメダリストが出ることになるとは、感慨深いものがあります。
ああ、気がつくと相米じゃなくって、大林の話にしてしまってる。このあたりが、映画的教養のなさですね。

【2008/11/28 22:58】 URL | こいずみきょうか #-[ 編集] | page top↑
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://outofmind.blog47.fc2.com/tb.php/299-3f324c04
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |