ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987
1987年に阿蘇山のふもとで豪雨の中行われた伝説のオールナイトフェスの記録映画、なのだけど、こんなイベントがあって、こんな事になっていたってことすら全然知らなかった。

1987年といえば大学を卒業して就職した年で、もはや尾崎豊に感情移入するような年齢ではない。じゃがたらがJAGATARAとして復活した年で、毎日CDウォークマンで「裸の王様」を聞きながら通勤していた。まあそれもどうかと思うが。
佐野元春は結構好きな曲もあったけど、アルバムをちゃんと聞くほどのファンではなかった。今でこそカラオケで歌ったりもするけど、当時はブルーハーツもテレビでしか見たことはない。あとは尾崎豊はおろか、ボウイも渡辺美里もハウンドドッグも、この映画に出てくるような大メジャーアーティストには、当時ほとんど興味がなかった。

そんな自分が一番感動したのが白井貴子&Clazy Boysのステージだったというのは、音楽というより映画の奇跡だろう。音楽的完成度で言えば、あの大雨の中一糸乱れぬプロフェッショナルなパフォーマンスを繰り広げたBOOWYや、トリの佐野元春& The Heartlandなんかの方がずっと優れているのかもしれない。
でも、開演直前の舞台袖の白井の、心底おびえたような、雨ざらしのステージに出たくないオーラ100%の表情から、とりあえずステージに出たはいいけれど機材トラブルで1曲目でギターの音が出なくなり、それでもバケツの水をひっかぶって、シャツを脱ぎ捨て上半身水着姿になって歌いまくるという一連のステージドキュメントには本当に心動かされた。
この日の上映は「ライブ上映」と銘打って、立ち上がったり歌ったり自由に楽しもうというイベント上映だったのだけど、白井さんの時はほんとに「頑張れ」って声かけたもん。それは実際にこのライブの会場で雨の中震えてステージを見ていた観客の目線じゃなくて、リハーサルやバックステージからの彼女の表情を見ていた映画観客の視線なわけで。

BOOWYのステージの完成度は凄かった。彼らだけバックステージ映像が一切使われていないのも、おそらく彼ら自身の意向なんだろうと思わせる、プロフェッショナルなステージ。別に好きなバンドではなかったけど、別格的なオーラを感じさせる。
岡村靖幸は実は初めて観た。プリンスみたいなリアルなエロいファンクは当時日本では珍しかったんだろうな。
ストリートスライダースは結構好きだったのだけど、ダルでブルージーなイメージの強い彼らが「Tokyo Junk」「Boys jump The Midnight」とアップテンポなナンバーで煽りまくるのは天候を意識してのセットだったのだろうか。
他にも、トップバッターのブルーハーツの連中が、次に出てきたRed Warriorsのマイクアクションキメキメのグラマラスなステージを袖から楽しそうに眺めてる様子とか、貴重なオフショットも楽しめる。

雨はトリの佐野元春&ハートランドが登場するころにはあがり、感動的なフィナーレを迎える。若き佐野さんのステージは本当に素晴らしい。「あの光の向こうに突きぬけたい」とはじまる「ストレンジデイズ」とか、「サムデイ」とかこのステージにはちょっとハマり過ぎってくらいの選曲だ。現地の人々もさぞかし盛り上がったことだろう。個人的には「99ブルース」の歌のグルーヴ感が半端なくカッコよかった。

しかしあれだね、サンダルやスニーカー履きの観客がビニール袋かぶって合羽がわりにしているのを見て、10年後の天神山の第1回フジロックを思い出さなかった人はいなかったろう。「不法駐車のためバスが遅れています」なんてアナウンスに、この時の経験が業界内で何も受け継がれなかったのかと愕然としたね。スマッシュの日高社長って熊本の出身じゃなかったっけ?
プロモーターらしきおっちゃんが司会でたびたび登場して、「コンサートは中止しません、みんな辛抱して頑張ってください」なんて力のないMCをたびたびかますのがどす黒い苦笑いを醸し出すのだけど、最後に登場した30年後の能天気ぶりはすばらしかった。最後の最後に出てきてそれかよ、直前の佐野元春のステージの出来過ぎな感動を見事にぶち壊してくれる、いいオチだったと思う。いやあ死人が出なくて良かったねえ。

まあそこで止めときゃよかったんだけどね。ラスト10分は本当に蛇足。ライヴ映像のダイジェストに合わせて出演者でもない現在のアーティストの曲が流れ、さらにえんえんと「ロックの神様は非情だ」みたいな下らないポエムがナレーションでかぶさる。最後に「ベイビー、大丈夫かっ」って、大丈夫じゃねえよ!
で、ようやく終わった!と思ったら、さっきのエンディング曲のPVが再度流れる。調べたらこの二人組、コンサートの主催のマザーの現在の所属アーティストなんだよな。権利関係難しそうなこの映画のオトナの事情山盛りがうかがい知れる。空々しいロックポエムがますます寒々しく思い起こされるのでした。

1月19日(日)塚口サンサン劇場(THEATER4)「ライブ上映」

ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987
(2013年、139分)
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

【2014/01/28 01:25】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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