グ音楽講座第3回「洋楽を日本語で考える」(9/28、塩屋旧グッゲンハイム邸)
旧グッゲンハイム邸で毎月無料で行われている音楽講座の第2回、最近ライヴで独自の日本語詞をつけた洋楽カヴァーを披露されているかえるさんこと細馬宏通による洋楽日本語訳講座です。
日本語で洋楽を考える

まず課題が渡されます。ビートルズの"Yesterday"の最初の4行を訳してみよう、ただし「歌えるように」というのがポイント。時間ぎりぎりに駆け込んだはずが開演と開場を勘違いしていたようでたっぷり時間があり、こんなのを作ってみました。

Yesterday
All my trouble seemed so faraway
Now I look as though they're here to stay
Oh, I believe in yesterday

つらいなあ
あんなにうまいこといっとたのに
なんでこんなふうになってもうたんやろ
あーあの日にもどりたい

講義は、まず最初はこの課題発表から始まるのですが、これがおもしろい。でだしの"Yesterday~"の訳だけでも「昨日」「昨日まで」とそのまま訳した人もいれば、まったく違う言葉にする人もいる。たぶん最初の方に提出したので印象が強かったんだろうと思いますが、私も指名されて恥ずかしながらお耳汚しさせてもらいました。
実は今回の課題はかえるさんのtweetで事前に知っていたのですが、来るまでにはさっぱり思いつかなかった。かえるさんから指摘があったとおり、頭にストレス(強調)がある最初のYesterdayをそのまま「昨日」とするには標準語では無理がある、そこで他の言葉にしたいなと思ってさっぱり思いつかなかったのが、最初にアクセントのある大阪弁のことばが出てきたとたんにあとはつるつるとできてしまった。でも、ちゃんと「昨日」を生かして訳しているほかの方の訳を聞いていて、そうかそんな風にもできるんだ、なるほどな、と考えさせられました。僕が一番すごいなあと思ったのは、いきなり「あしたは」で歌い始めた人。でも、ちゃんとそれで「昨日」にこだわる歌い手の気持ちが訳されてるからうまいなあと思ったんですが。

続いてパワーポイントを使って、ことばの密度の問題、音程とリズムの関係などなど、英語の詞を日本語に置き換える際の問題点についてのレクチャー。洋楽日本語カヴァーの極北として紹介された松岡計井子のビートルズがスゴイ破壊力であった。
特におもしろいなあと思ったのはライミング(韻)の問題。かえるさんの解釈によると、「韻を踏む」という行為は構造上の規則ではなくて、次に来る言葉の予感もしくは兆候なのだ、ということ。次に来る音の予感で詩のイメージがよりふくらみを持つというんです。日本語ではもともと韻を踏む習慣がなかったため、あまりきっちりと韻を踏みすぎるとどうしても妙にがんばった感、うまいこといいましたね感が出てしまう。体言止めで韻を踏むと、(そういった手法で韻を踏む手法が日本語ラップ以降確立されたので)どうしてもJ-RAPになってしまうということでYesterdayの体言止め試訳によるかえるさんのラップが大爆笑でした。

第2部は実戦編ということで、ランディ・ニューマンに始まる、数々のかえるさんの日本語訳洋楽カヴァーの近作が披露されます。「Stop Calling」=「ひょっこり」でひょうたん島になってしまったレディ・ガガもおもしろかったけれど、「雨に濡れても」やタルホ経由の「ブルームーン」が美しかったな。そして以前のかえるさんのライヴで耳にして、ちょっとした衝撃だったボウイの「ヒーローズ」が今回も良かった。原曲は冷戦下、ベルリンの壁に隔てられたカップルを歌ったといわれる歌で、「僕はキング、君はクイーン」という歌いだしや、「僕らは一日だけヒーローになれる」というキメ文句などやたらドラマチックな詞にちょっとかえるさんもお困りだったご様子。ベルリンの壁が崩れて何十年もたつ今、僕と君を隔てているものを「壁」ではなく、もっともやもやと形のない「霧」とし、歌いだしのフレーズを「僕は水、君は麦」としたことで、「いま」聞いて響くアクチュアルな歌にアップデートされたと思います。原詞に寄り添うように作られた他のカヴァー曲と比べるとこの曲だけ少し異質な印象を最初に聞いたときには受けたのですが、後半、かえるさんには珍しくボウイが憑依したかのようにパワフルに、絶望的な状況にいる「君と僕」の連帯を歌い上げるこの曲も、実はそれほど原詞のエッセンスを失っているわけではないな、と思うように至りました。
元のテキストをそのまま100%別の言語に移し変えることは困難である、というのが翻訳というものの宿命なのですが、洋楽日本語訳カヴァーの場合は詰め込める言葉の数が限定されるためさらにそれは困難なものとなります。どうしたって翻訳者によるその歌の解釈が介在するため、結果翻訳者の数だけ日本語訳ができてしまうのが面白いところだと思います。ですから、日本語訳カヴァーはもちろん原曲を知っていればその方が楽しめることが多いのですが、かえるさんの場合、独特の視点と言葉選びでオリジナルのエッセンスを汲み取りながら、時に「いま」の(あまり強調するのも無粋だと思うのですが「3.11以降の」ということです)空気を反映した、それ自体独立して鑑賞しうる作品になっているのがさすがだなと思いました。

山路さんのおうどん
ほんとうはワンダカレー店でカレーを食べてから行こうと思っていたのだけど、時間ギリギリだと思っていたので寄らずに旧グッゲンハイム邸に直行しました。そしたら開場したばかりだったみたいで誰もお客さんまだ入ってなかったww
終わるまで何も食べられないかな、と思ったら幸いにもyumboの山路知恵子さんが山路製めんのおうどん出してられて、さっそく冷のしょうゆうどん頼みました。前から一度食べてみたかったんだ。うまかった。そこらで食べるうどんとまったく違うこの歯ごたえ。麺そのものにしっかりとした味がある!
(第2部演奏曲目)
"Simon Smith And The Amazing Dancing Bear""I Think It's Going To Rain Today"(Randy Newman)、"Walk On The Wildside"(Lou Reed)、"Blue Moon"(Hart/Rogers)、"Telephone"(Lady Gaga)、"Heroes"(David Bowie)、"Yesterday"(The Beatles)
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テーマ:LIVE、イベント - ジャンル:音楽

【2011/10/06 20:30】 | ライヴ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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