Upstairs Down Vol.1(4/16、渋谷WWW X)
僕が最初にベルハーを好きになったのはなんと言っても朝倉みずほの歌や声による部分が大きかったのだけど、それだけじゃない。他のメンバーもみんな個性的だし、フロアの雰囲気もいい。そしてなにより唯一無二のその独特な音楽面ヴィジュアル面のディレクションが大好きだったから、ベルハーの後継グループThere There Theresのファーストシングル発売記念イベントとしてそのAqbirecの新展開が一同に会するこのイベントの日に東京出張が決まった時には、ソッコーでチケット押さえたよ。推しもいないのに。
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まずは春野さ子・MIGMA SHELTERというAqbirecの新人2組から。
この日が2回目のステージの春野さ子はベルハー&新グループの公開オーディションの合格者らしい。長い白いYシャツ風のワンピース姿で、緩いステップを踏みながら、不安定な歌唱でゆるふわなポップスを歌う。自然体というにはいささか線の細すぎる浮遊感あふれる佇まいは、でも病的な闇に踏み込まないサジ加減の優しさが絶妙。微妙なピッチで繰り返される「愛くるしくてメイソウ中」というリフレインが頭から離れない。メイソウ中はてっきり「迷走中」かと思ったら、この日販売されていたCDRのクレジットを見ると「瞑想中」だった。今後もOA専門でマイペースの活動を行っていくようだ。
そして今回初披露となる新グループ、IGMA SHELTER。すでにオフ会などでメンバーは公開されており、ベルハーの甘楽改めヨネコに加えてオーディションで選ばれた5人の新メンバーのヴィジュアルのレベルの高さもあり期待が高まっていた。この日のライヴの衣装はオフ会以来お馴染みの紫のジャージ上下。奇声を上げながらタブラのような音色の短いイントロで登場し、エキゾチックなインド風のコーラスで始まるラーガ調の1曲目に突入する。エンドレスで繰り出されるトランシーなダンスビートにのせて力の入ったしっかりとした振付で歌い踊るパフォーマンスは期待以上。特に3曲目のクライマックスで熱に浮かれた譫言のような異言を喚きながら、ステージ上を派手に駆け回るヨネコは見ものだった。
3曲披露した後でヨネコMC、初ステージ前でみんな緊張していたので気合を入れるためにお互い腹パンしたとか、享楽的なゴアトランスとは180度イメージ逆の生真面目なイイ話。「じゃあ次3曲目最後の曲です」…あれ、3曲…終わったよね…?ヨネコ相当テンパってたんだろうなあ。

ここで最初のゲスト、「ゲイでもアイドルになれる」がキャッチフレーズのゲイアイドル二丁ハロ。ライヴを見るのはたぶん2回目か3回目。過剰にドルヲタ仕様に作りこまれたパフォーマンスはさすが二丁目仕込みだけど、振付師としても活躍しているミキティ本物による歌詞がやたらと切ない。終盤歌われた欅坂46の「サイレント・マジョリティ」へのアンサーソング「マイノリティ・サイレン」とか、タイトルは反町だけどまっすぐにカミングアウトについて歌った「言いたいことも言えないこんな世の中じゃん」とか、マイノリティであるがゆえのリアリティに裏打ちされながらも特権化するのではなく普遍的な歌として提示していて、こんなん聞いちゃったら他の「エモさ」を売りにしたアイドルなんてもういらないと思う。

朝倉みずほとともにベルハーをけん引してきた柳沢あやののソロユニット、CLOCK & BOTAN。下手袖でアコースティックギターを抱えているのが見えたのに、登場する直前に彼女自身の希望でセットリストを変更したようで、手ぶらで登場して譜面台を片づけて流れ出したオケはベルハー末期の彼女のリード曲「BEADY RIOT」。ハードにぶちかまして、そのままファーストシングルカップリングの「トウィンクル」へ。柵に立って前のめりで歌う姿は相変わらずサマになる。弾き語りを挟んでの「グルーミィ」も良かった。もっとこの路線でどんどんオリジナル歌ってほしい。ちなみに弾き語りは…うーん、もう少し練習してほしい感じ。

2組目のゲストは盟友ゆるめるモ!、「モモモモモモ!」で始まり「idアイドル」から「転がれ!」というオープニングは、形を変えて転がり続ける彼女たち自身とベルハー~ゼアゼアへの思いを込めたグッとくる選曲。とはいえ開演から2時間立ちっぱなしでこのあたりで限界、もうあかん退却するか、と一度は思ったんだけど、それがどうだ最後「オンリー・ユー」であのさんがあ”ーーーーーーーーって叫んだ瞬間に体中の痛みがすーっと消えてるんだからアドレナリンスゴイ。

そしていよいよThere There Thers、この間「IDOL ROCKS!!」で初来阪の彼女たちを初めて見た印象はとしては、なによりも「ベルハーとおなじ格好をしたメンバーがお馴染みのベルハーの歌を歌っているのにまったくベルハーじゃない」っていう不思議な感じが強かった。2回目の今回は結果として、ゼアゼアとしてとにかく単純に楽しかった。
たぶん自分の中でカチっとハマったのは3曲目「サーカス」の時で、確かお披露目をYoutubeで見た時も一番違和感のあったしっかりタイミングの揃ったヘドバンを目にしたあたり。末期のベルハーならみずほが倍速で回っていたところだ。ベルハーもおそらく最初はみんなおんなじかっちりした振付だったはずなのが、全体に少しずつ過剰にチューンナップされた結果、全く別のものに進化していた。ベルハーにみずほがいなかったらありえたかもしれないもうひとつのベルハーをやりなおそうとしているんだと、はっきりわかった。みずほのいないベルハー、もちろんそれはベルハーではありえない、だからゼアゼアだ。楽曲はそれに耐えるだけの強度を持ち続けているし、振り付けだって完全にリニューアルされている。最後にまとめて披露された今回のEPに収録されたゼアゼアとしての新曲3曲のパフォーマンスは特に素晴らしかった。その中でも田中D作曲の鼻歌感満載の謎曲「Upstairs down」は、そこまでベルハーナンバーを上手に歌いこなしていたゼアゼアメンバーたちのむき出しの不安定な歌声を堪能できるし、楽曲をラジオで聞いたときには曲の奇怪さに耳が行って気がつかなかったその切なさも、振り付けが入るとバンジョーのフィーチャーされた狂騒的な中間部との対比がはっきりして一層鮮やかに伝わる。そしてファットなベースラインの上で右手を上げてただただペリカンペリカン歌い続けるメンバーたちとオタクたち。ゼアゼアになって、ややこしい物語から解放されて今演じられてるパフォーマンスをただ楽しむことができるようになったような気がする。まあそんなこというのは推しがそこにいないオタクの戯言かもしれないが。

なんて思ってたら、アンコールでブッチさんの呼び込みでゼアゼアのメンバーに加えてゆるめるモ!とさらにあーやん、ヨネコも合わせたコラボレーションが。
12月の最後のベルめるモ!の時と同じ会場で、なんていうマッチメイク、ようなぴの「他のグループのことでそんなことはなかったのにベルハーがなくなると聞いたときには全員が泣いた」なんて泣かせるトークとか、おいおいまだ早すぎるだろう。
変化を恐れず星空を眺めながら一歩一歩歩いていくという詞の「ナイトハイキング」に続けて、最後はもちろん全員で盛大にぶちかまされる「エッジ」。気がつくと、目の前の柵の上に、4か月前は今ゼアゼアの後輩たちの着ている黒い制服を着ていたあーやんが真っ白の衣装ですっくと立って、「当たり前の明日はいらないよ」なんてガンガン歌ってる。あーやん最高や、主役のゼアゼアを抑えてすべてかっさらって行きやがった。そして僕は単純に音楽が楽しくてなんて言っていた舌の根のかわかないうちに、彼女の背負う物語の大きさに泣くしかない。

僕はベルハーが好きやったし、今も大好きやから、今後もメンバーやスタッフたちの作り出す音楽を、これからも追い続けるだろう。今はまだまっしろなゼアゼアのクロタンのミグマの、否応もなく生み出される物語の行方を追いかけていきたい。相変わらず推しがいないから、物販ではあっち行ったりこっち行ったりするんだろうけど。
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【2017/04/18 22:03】 | ライヴ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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