~ふたつの異歌~「早川義夫/山本精一」(8/30、梅田Shangri-la)
山本さんのライヴも早川さんのライヴも何回も観たことがあるし、会場のシャングリラも何回も行ったことがある。
でもいつになくなんか緊張している。早川義夫も山本精一もどちらも自分が音楽聞いてきた中で大きな位置を占める歌い手だ。だけど二人の音楽を同じ土俵で聞くことはあまりなかった。いったいどんなことになるのだろうかという緊張感。
二つの異歌
緞帳の上がったステージ上には、下手に木製のピアノ、上手にギターがセットされ、スポットライトが当たっている。ギターはおなじみの黒いボロボロのストラト、山本さんの勝負ギター。
Wilcoの”The Whole Love”がBGMに流れる中開演時間になり、まずは山本精一登場。
おなじみ「待ち合わせ」から、フォークルの「オーブル街」のカバー、羅針盤の「小さなもの」と、いきなりオッという流れ。「オーブル街」は数日前早川さんがtwitterで「山本さんの歌う「オーブル街」がいい」と書いてはったのを踏まえての選曲だろうか。以下「なぞなぞ」「幸福のすみか」(山本精一&PHEW)の曲から最新の「ゴミ箱の中」まで、代表曲がずらり並んだ、1時間の直球のうたものセット。
個人的には、最近演奏される頻度の少なかった「なぞなぞ」の曲がひさしぶりに聞けたのが嬉しかった。PHEWの作詞による「幸せのすみか」の曲を筆頭に、壊れたり死んだりさよならしたり、まあネガティヴな詞のオンパレードなのだけど、そんな中にかすかな光りを放つ叙情性にいつもヤられる。それは山本さんらしい含羞の表現なんだろうと思う。「言いたいことがあるならずっと黙っていればいい」…はにかみと虚無の沈黙の中にハーモニーの光が差し込む「沈黙」がいい。
最後はイントロと中間部に大音量のノイズをはさんだNOVO-TONOの「夢の半周」。

休憩をはさみ、早川義夫のセット。早川さん、赤いマル「よ」のワンポイントの白いTシャツ姿がなんとも微妙でいい感じ。失礼ながら、登場した時の佇まいはどちらかというとコミカルな印象すら受けたのだけど、いったん演奏が始まり、足をばしばし踏み鳴らしてリズムを取りながら鍵盤を叩き、歌声が発せられると、有無を言わさずひきつけられてしまう。
1曲目「ラブ・ジェネレーション」で高らかに歌われているように早川さんの歌はいつも「愛」がテーマだ。序盤の「純愛」「パパ」「グッバイ」とあけすけに歌われる濃厚なラブソングの連続は圧巻で、先ほどまでの含羞に満ちた(少なくとも表だって「愛」を歌うことはまったくない)山本さんの歌の世界とのあまりの落差にクラクラする。いや、早川さんの歌に含羞がないわけではなく、恥ずかしさもまるごと含めて「恥ずかしい僕の人生」と歌いきられてしまうのだけど。
「音楽」「いつか」といった「歌うこと」についての歌が続く終盤に歌われた「身体と歌だけの関係」が良かった。「がんがんやって早く飽きてね」とドスの利いたリフが繰り返された果てに「歌だけが残る」という美しいサビメロが残るこの曲、もともとハイポジのカヴァーだが、もはや早川さん自身の歌として血肉化している。

アンコールで二人そろって登場、いよいよ共演!と思いきや、「すいません」と山本さんがトイレに退場し、早川さんがひとしきりMCでつなぐ羽目に。
「山本精一のような若い客のついている歌い手と共演すべきだ」という得三の店長の言葉で今回のツアーが生まれたという話や、人見知りで無口なふたりが楽屋で交わした会話から判明した意外な共通点、とか。その共通点とは、どちらもMCがほとんどないという話だったんだけど、そんな話の間に山本さんが戻ってきて、早川さん「僕いっぱいしゃべってますね」なんていいながらアンコールの演奏に移る。
「この世で一番キレイなもの」の走り気味の早川さんのピアノに、山本さんがギターの澄んだ音色で絡んでいく。いつもは含羞の陰に見え隠れしている山本さんのリリカルなポップセンスが、早川さんのごつごつしたモノクロの音楽にうっすらとした淡い彩りをつけていく。
山本さんと早川さんでボーカルを分け合いながら、続いて「サルビアの花」へ。山本さんのスタイルだと、早川さんの歌にかき消されてしまうんじゃないかとちょっと危惧したのだけど、山本さんギター演奏はもちろんのこと、歌唱も、もしかしたらご自身のセットより力が入っているんじゃないかというくらいに感じられる。
「からっぽの世界」がまず山本さんのギター弾き語りで歌いだされる。いたずらにノイジーな混沌を演出するのではなく、深いリバーブのかかった音の底に、静かに歌を配置していくような歌唱。早川さんがピアノとともに加わり、歌をひきつぐ。深い深い早川さんの歌声に応えるように、ギターのフレーズがかき鳴らされて、胸の奥がざわつき、いっぱいに膨らみ、言葉を失う。ぼく唖になっちゃった。

再度ふたりでアンコール、早川さんのジャックス解散後の最初のソロ作「かっこ悪いことはなんてかっこいいんだろう」のラストを真っ黒に締めくくる名曲「埋葬」。こんな歌がライヴで聞けるとはなあ。

アンコールでの長いMCの、ふたりの共通点の話題で、早川さん「ほらさっき歌っていたあの「言いたいことがあるなら~」って曲」と「沈黙」を取り上げられたのだった。山本さんも嬉しかったのか、「あの曲は一番ジャックスを意識して作った」なんてことをおっしゃって。対極にあるようなお二人の歌は実は背中合わせみたいなものなのかもしれないと思った。


トイレから戻ってきてアンコールのステージに再登場された山本さんがぼそっと「飲みすぎた」とおっしゃってたこと、そのあとの共演の異様なまでに張りつめた空気、最初に僕が感じていたた緊張感って、もしかして出演する当の山本さんが実は一番感じてられたんじゃないかと、ライヴが終わってから気が付いたのだった。
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テーマ:ライヴレポ・感想 - ジャンル:音楽

【2013/08/31 13:15】 | ライヴ | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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